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「コミュニティ」と「コミュニケーション」。似て非なるこの2つの言葉の違いを明確に説明できますか?
私たちは普段、何気なくこの言葉を使っていますが、その本質的な違いを理解している人は少ないのではないでしょうか。特に、インターネット上でコミュニティを形成し、運営していく際には、この2つの概念を正しく理解することが非常に重要になります。
今回は、だいすきなPodcast「ハイパー起業ラジオ」で配信された「#4-2 コミュニティは面で、コミュニケーションは線?違いを説明できますか?」の内容を基に、インターネット時代のコミュニティ設計術について解説していきます。
内容をざっくりでも理解したいひとや、本編を聞くまえに要点をつかんでおきたいひとは必読の内容です!
目次
コミュニケーションは線、コミュニティは面
まず、大前提として押さえておきたいのが、コミュニケーションは「線」、コミュニティは「面」であるという考え方です。
コミュニケーションは、人と人をつなぐやり取り、つまり「線」をイメージすると分かりやすいでしょう。例えば、LINEでメッセージのやり取りをする、電話で会話をするといった行為は、まさに人と人を「線」で結ぶコミュニケーションにあたります。
重要なのは、コミュニケーションには必ず送り手と受け手が存在し、両者を結ぶ「線」が存在するということです。誰とも繋がっていない状態では、それはコミュニケーションとは呼べません。
一方、コミュニティは、複数のコミュニケーションが織りなす「面」として捉えることができます。
例えば、複数人が参加するFacebookグループを想像してみてください。そこでは、参加者同士が様々なコミュニケーションを取っています。AさんとBさんが会話をしている横で、CさんとDさんが別の会話をしているかもしれません。
そして、重要なのは、コミュニティには、誰ともコミュニケーションを取っていない「Eさん」のような存在も含まれるということです。Eさんは、AさんやBさんたちの会話、CさんやDさんたちの会話をただ「見ているだけ」かもしれません。しかし、Eさんもコミュニティを構成する大切な一員なのです。
コミュニティを設計する際には、この「見ているだけ」のEさんのような存在を忘れてはいけません。なぜなら、コミュニティの大多数は、実は「見ているだけ」の存在であることが多いからです。
例えば、2ちゃんねるのような匿名掲示板では、実際に書き込みをしているユーザーはわずか数%で、残りの90%以上は「見ているだけ」のユーザーだと言われています。
コミュニティ設計において、発信する人の声ばかりに耳を傾け、「見ているだけ」の存在を軽視してしまうと、真にユーザーにとって居心地の良い空間は作れません。
サウナ室の会話は「コミュニケーション」、サウナ室自体の場は「コミュニティ」ですね!
コミュニケーションの中身を分析する
コミュニケーションをさらに深く理解するために、その「内容」に着目してみましょう。
コミュニケーションの内容は、大きく「パケット型」と「グルーミング型」の2種類に分類できます。
「パケット型」コミュニケーション
「パケット型」とは、一言で言えば「要件重視」のコミュニケーションです。
パケット型コミュニケーションとは、伝えたい内容そのものが重要なコミュニケーションです。「今日の晩御飯は何がいい?」「ハンバーグがいい!」といった会話のように、情報を正確に伝えることに主眼が置かれています。そこに感情や雰囲気は必要ありません。
このように、「パケット型」は情報を正確に伝えることに特化した、いわば「事務的なコミュニケーション」と言えるでしょう。
インターネット上では、2ちゃんねるが「パケット型」を重視した設計で知られています。 2ちゃんねるでは、情報の伝達を最優先するために、あえて絵文字や顔文字の使用が制限され、無駄を省いた独特の言語体系が発展しました。
パケット型コミュニケーションは、簡潔で分かりやすい言葉遣いが好まれます。ビジネスシーンや緊急時など、正確に情報を伝える必要がある場面で特に有効ですね。
おすすめのサウナ、施設のリニューアル情報とかは「パケット型」ですね!
「グルーミング型」コミュニケーション
一方、グルーミング型コミュニケーションは、コミュニケーションそのものが目的となるコミュニケーションです。
「昨日、あの映画観に行ったんだけど、面白かったよ!」「へえー、そうなんだ!」といった会話のように、必ずしも重要な情報が含まれているわけではありません。 しかし、共感や親近感を生み出し、相手との心の距離を縮める効果があります。
「グルーミング」という言葉は、もともと動物行動学で使われていた用語で、猿などが互いの毛づくろいをする行為を指します。 毛づくろいには、ノミなどの寄生虫を取り除くという実用的な側面もありますが、同時に仲間同士の絆を深めるという側面も持っています。
「グルーミング型」のコミュニケーションも、まさにこの毛づくろいのように、相手との関係性を築き、信頼関係を育む役割を担っています。
インターネット上では、SNSでの「いいね!」やコメントのやり取りなどが「グルーミング型」に当たります。 特に、近年増加傾向にあるオンラインコミュニティにおいては、この「グルーミング型」のコミュニケーションが非常に重要になってきています。 なぜなら、オンライン上では、リアルでのコミュニケーションと比べて、相手の表情や声色が読み取りにくく、誤解が生じやすいからです。
また、女子高生の会話では、グルーミング型コミュニケーションが多く見られます。彼女たちは、大人には理解できないような独特の言葉遣いや話題を用いることで、仲間意識を高め、グループの結束力を強めていると言えるでしょう。
「グルーミング型」のコミュニケーションを意識することで、相手との心理的な距離を縮め、より円滑な関係を築くことが可能になります。
サウナーどうしで集まると、「あそこのサウナすきなんだよね〜」「わかる!!!」ってグルーミング型の会話が多い!
インターネット上のコミュニティの種類
インターネット上には、ブログ、SNS、掲示板など、様々なコミュニティが存在します。 これらのコミュニティは、大きく「コンテンツ中心型」「トピック中心型」「目的中心型」の3つに分類することができます。
コンテンツ中心型
YouTubeのコメント欄や、人気ブログのコメント欄などが代表例です。
- 特徴:特定のコンテンツに対する反応を共有することが中心
- メリット:不特定多数のユーザーを集めやすい
- デメリット:ユーザー間の相互作用が生まれにくい
コンテンツ中心型のコミュニティでは、ユーザーはあくまでも「コンテンツの視聴者」という立場になりがちです。 そのため、ユーザー同士の活発な交流や、コミュニティへの帰属意識が生まれにくいという側面があります。
トピック中心型
共通の趣味や関心事を持つ人々が集まる掲示板サイトや、Facebookグループなどが該当します。
- 特徴:特定のテーマに興味や関心を持つユーザーが集まる
- メリット:深い議論や情報交換が行われやすい
- デメリット:ニッチなテーマだとユーザーが集まりにくい場合がある
トピック中心型のコミュニティでは、ユーザーは共通の話題を通じて互いに影響を与え合い、コミュニティ自体が独自の文化や価値観を形成していくことがあります。
目的中心型
近年注目を集めているDAO(Decentralized Autonomous Organization)や、オンラインサロンなどが代表例です。
- 特徴:共通の目標を達成するために活動する
- メリット:ユーザーのモチベーションが高く、具体的な成果に繋がりやすい
- デメリット:コミュニティ運営にコストや手間がかかる場合がある
目的中心型のコミュニティでは、ユーザーは目標達成に向けて積極的に活動し、その過程で互いに協力し合い、深い絆で結ばれていきます。
銭湯(サウナ)もDAOのように運営するのがよさそうだなと最近考えてます
これらの3つの型は、あくまで分類の一つであり、実際には複数の型が組み合わさったコミュニティも多数存在します。
例えば、オンラインサロンの中には、コミュニティ内で共有されるコンテンツをきっかけに、ユーザー同士が活発な意見交換を行うケースも少なくありません。
重要なのは、どのようなコミュニティを作りたいのか? どのようなユーザーに集まって欲しいのか? という点を明確にした上で、それぞれの型のメリット・デメリットを理解し、最適な設計を行うことです。
まとめ
今回は、インターネット時代のコミュニティ設計術について解説しました。
これらのポイントを踏まえ、ユーザーにとって本当に居心地の良いコミュニティを設計していくことが重要です。
特に、コミュニティを設計する際には、「見ているだけ」の存在を意識し、彼らも巻き込むことができるような工夫を凝らすことが大切です。
Podcastではより具体的な話が聞けたり、尾原さんとけんすうさんの掛け合いを楽しめます!ぜひ本編もお聞きください!
最後にこの記事のテーマソング「コミュニケーションの線、コミュニティの面」でお別れです!